信じ続けるのはタフなこと?(2)

ハッピーライフ

こんばんは。潤治です夜EE042.jpg
今回は、前回の記事“信じ続けるのはタフなこと?(1)” の続きです。
少し昔の物語です。携帯電話が無かった頃の、相手との約束だけが頼りだった頃の…。
怖れや不安などで、本来ある自然な姿を見失ってしまう時、人はエゴの塊だったりします。
たとえば、猜疑心で自分を過小評価することもそうです。
自分だけが不幸になろうとする貧困意識もそうです。

豊かさのシャワーは、誰にでも等しく降りそそいでいますが、
それを受け取らないでいようとする人の弱さがあります。
そんな弱さを持つ男性“彼”が、思いがけずに意中の女性とデートすることになりました。


待ち合わせの約束当日、サイン会のあるお店の前。HAN036.jpg
彼は、少し早めに着きました。
彼女を待つワクワク感は最高潮でした。
彼女の笑顔、仕草、言葉が、自分に向けられるのだと思うと、笑顔がこぼれてくるのでした。
はじめの言葉は何にしようか…
約束の時間が少し過ぎました。
彼は彼女とのこれまでの日々を思い返します。
自分に自信がなく、いろいろな情報やモノで自分をメッキし、背伸びをし…
誰かの真似をして、自分以上の人間になったかのように錯覚をしてみたり…
努力と我慢を履き違え、苦労している自分に自己憐憫し…
そんな自分とサヨナラできる時が近づいてきている…
そんな期待を膨らませていました。

もう、あの頃の自分には戻らない
きっと彼女との日々が僕を変えてくれる

約束の時間から、30分が過ぎました。
どうしたんだろう?何をしているんだろう?
約束の時間はとっくに過ぎているのに…

まだ、形にならないでいる心がざわつきだします。
約束の時間から、1時間が過ぎました。
こんなに待たせるなんて、どうかしている!
絶対に許さない!会ったら、強く言ってやる!

彼は怒りを感じながら、待ち続けます。
怒りで隠している不安や怖れを感じるのは、もう少し後になってからです…。
結局、約束の時間から3時間が過ぎたとき、彼は待つことをやめます。
怒りは諦めになり、彼自身が感じていた
“自分がこんなにうまくいくはずがない”
“幸せがこんなに簡単に転がり込んでくるはずが無い”
“彼女はいつしか自分のことを裏切る”
という考えを受け入れることになりました…。
彼女はどうせ、僕をからかったんだ。
愛想よく、もの欲しそうに近寄ってくる男をからかったんだ。
今頃、笑っているに決まっている!
電話番号は会ったときに教えるなんて調子のいいことを!
手の込んだイタズラの出来に誇らしげに笑っているに違いない!
何てたちの悪い女なんだ…、もう会いたくない…。
からかうのなら、他の男にしてくれよ…。
もう、二度と愛想よく、女性に近寄ったりするものか!
次の日から、彼女がお店にやってくることはありませんでした。
しかし…、それでも、彼は待ち続けました。
やがて、冬が終わり、春が来る頃…
彼はその喫茶店を辞めます。
彼女を待ち続けることが辛かったからです。
彼女を信じ続ける気力が、もう彼にはありませんでした。
裏切られたことにしてしまいたい。
いっそ、悪い女につかまったことにしてしまいたい。

それでもなお、彼女の笑顔を思い出しては、
信じ続けたい自分がいることに気づきます。
その繰り返しに彼に疲れてしまったのでした。

裏切られた自分
騙された自分

そのレッテルを自分に貼ってしまったほうが楽だと思ってしまうのでした。
やっぱり、価値のない自分でいるほうが楽。
やっぱり、劣等感の中にいる自分のほうが自分らしい。
悲しいけど、そう考えているほうが、楽なんだ…。
信じ続けるのは苦しいから…。

…数年が経ち、彼はあまり過去のことを思い出さずに過ごしていました。
引越しもして、電話番号も変えてしまいました。
働いていたあのお店にも、辞めてから一度も立ち寄らなくなっていました。
あのお店に入ると、“彼女” を思い出してしまうから…。
しかし、ある日、お店に立ち寄ることを決意します。
昔の自分とサヨナラしようと思うのでした。
新しい扉を開こう…そう誓う彼でした。
それが、過去の扉とは…、その時の彼は知るよしもありませんでした。
(もう一回続く)

俺は一度信じた男は斬らぬ
疑って安全を保つより、信じて裏切られた方が良い
                    前田慶次 「花の慶次~虹のかなたに~」

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