刻詠珈琲店8杯目「解説書の意味と、自分の直感(インスピレーション)が違う時、どっちを信じる? 」オラクルカード【解釈・読み解き編】

カードの使い方

路地裏にある、アンティークカフェ『刻詠珈琲店』(ときよみこーひーてん)。
マスターは東儀 宗介(とうぎ そうすけ)、かつて天使だった頃の名は、メネフィール (Menephiel)。
仕事帰りや週末に通う常連OKは、小鳥遊 紬(たかなし つむぎ)、28歳。中堅デザイン事務所のグラフィックデザイナー。

夕暮れ時の『刻詠珈琲店』。オレンジ色の光が窓から差し込む中、紬は少し困った表情でカウンターに座った。宗介は静かにコーヒーを淹れている。その香りがまるで宗介の優しさであるかのように、店内に漂っている。

「宗介さん、ちょっと困ったことがあって……。」
「困ったことですか?まずは、一杯どうですか?」
温かいカップが、そっと紬の前に置かれた。
宗介は楽しそうに紬に視線を向けている。

「オラクルカードを引いて解説書を読んだんですけど、書いてある意味と、私が直感で感じたことが全然違うんです。こういう時って、どっちを信じればいいんでしょう?
やっぱり解説書が正しいんですか?」

宗介はカップを磨く手を止め、ゆっくりと紬のほうを向いた。
「……その答えは、最初にカードを選んだ時の、紬さんの心の中にありますよ。」
「え? どういうことですか?」
「そのカードを初めて手にした時のことを、思い出してみてください。なぜ、そのカードを選んだんでしたっけ?」

紬は少し考えて、顔を輝かせた。
「絵柄が可愛くて、心惹かれたからです!」
「……そうでしたね。その時、もう、紬さんとカードは繋がっていたんですよ。」
宗介は古いカードを一枚取り出し、カウンターに置いた。
「オラクルカードが心を映す鏡だということはお伝えしましたね。そして、その鏡に映るメッセージを最初に受け取るのは……紬さん自身の心です。解説書は、そのメッセージを言葉にした、ある一つの解釈にすぎません。」
「でも、私の直感が本当に正しいのかって、自信がなくて……。」

宗介は微笑みながら、静かに首を振った。
「紬さん、自分の直感を信じてみませんか。
……それが、人生をより良く生きるための、大切な姿勢だと思いますよ。」
宗介はゆっくりとカップを磨きながら続けた。
「直感は使えば使うほど研ぎ澄まされていきます。古い刃物を丁寧に研いでいくように……少しずつ、鋭くなっていくものです。」
「じゃあ、解説書はどう使えばいいんですか?」
「そうですね、確認として使うのはどうでしょうか?」

宗介は棚から解説書を取り出した。
「たとえば、紬さんが『このカードは勇気を持てと言っている』と感じたとします。解説書を開いて、似たような言葉があれば、それは直感が正しかったという確信につながります。」
「答え合わせみたいな感じですね!」
「ええ、そうです。もし、解説書と全く違っていても、それは紬さんの心が、今に必要なメッセージを、紬さんの言葉で受け取ったということです。」

宗介は窓の外を見つめた。
「それは誰の言葉でもなく、紬さんだけの真実です。
……怖れることはありませんよ」
紬は深く頷いた。
「なんだか安心しました。これからは自分の直感を信じてみます!」
「ええ、それがいいですよ。そして、それがカードを通して自分自身と繋がる、最初の一歩です。」
宗介は微かに微笑んだ。
「紬さんの直感という羅針盤を信じてみましょう。そして、ゆっくりとひとつひとつ、オラクルカードとのお付き合いを続けてみてください。」

窓から入る夕日が、カードとコーヒーカップを優しく照らしている。
紬は自分の内なる声に耳を傾ける大切さを、改めて心に刻んだ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました