信じ続けるのはタフなこと?「梅雨」

潤治の徒然草

以前、「信じ続けるのはタフなこと?」という短編の物語を書きました。

もう、7年前のことです。
→「信じ続けることはタフなこと?」シリーズ

物語に出てくる「彼」は、自分の望みを知り、行動を起こし、その望む未来を前にしながら、その未来を信じることができませんでした。しかし、それは誰にでもあることで、幸せな自分よりも不幸になっていく自分のほうがしっくりすることもあります。

「受け取ること」という手垢のついたスピリチュアルな至言がありますが、無限の幸せを感じ続けることよりも、我慢すれば底が想定できそうな不幸のほうが居心地が良いなんてこともあります。

今回の物語も、「信じ続けるのはタフなこと?」をテーマに書いていきます。

拝啓  ミツル君

梅雨もそろそろ明けそうな天候です。
東京の夏は暑そうですね。

ミツル君が東京に行ってから、もう半年が経とうとしています。

大学生活は楽しいですか?

わたしは、慣れない社会人生活に毎日、戸惑い、失敗ばかりです。

わたしもミツル君と一緒に東京の大学に行きたかったな。

きっと、キャンパス生活を謳歌しているんだろうね、ミツル君。

あらためて思うけど、社会人になると時間が目まぐるしく過ぎていって、大好きな本を読む時間もありません。

時間に追われていて、何かに焦っていて、それがなんなのかも分からず、自分を見失ってしまいそうになります。

ミツル君、そちらの生活はいかがですか?

卒業式で話して、それきりだね。

3年の夏、ミツル君が辛い時にわたし、何もできなかった。
…本当にごめんね。

落ち込んでいるミツル君にどう声をかけていいのか、言葉が見つからなかった。

ご両親が離婚したこと、高校を卒業してから聞きました。
あの家に残されたお母さまと街で顔を合わせることがあります。
ミツル君とお父さまがいないせいか寂しそうです。

わたしは、ミツル君の抱えている寂しさに触れるのがなんだか怖くて、わたしには立ち入ることなんてできないって思ってしまって…、そのまま時間が過ぎてしまったね。

ミツル君、今、どうしていますか?

お盆には帰ってくるのかな?
クラスの仲間たちで同窓会もするようです。

わたしはミツル君に会えるの、とても楽しみにしています。

社会人になって、わたしはバッサリと髪を切りました。
少しだけどメイクもするようになりました。

久しぶりに会ったら、わたしのことわかるかな?
…ちょっと不安です。

夏の同窓会、男子からも連絡が行くと思います。

来れるかな?来れるといいな。

たくさん話せるといいな。

お盆には、帰ってきてね。
夏祭りの花火、一緒に見られたらいいな。

楽しみにしています。    敬具

早紀

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