「水本くん、君が心から欲しいもの、やりたいこと、ワクワクすること、なりたいものをノートに100個挙げてごらんよ。」
彼はそう言うと、紙と鉛筆を渡してきました。
新宿のロイヤルホスト新宿三井ビル店でのことです。
もう、かれこれ16年前…、お世話になったメンターとのワンシーン。
「心から欲しいもの?」
「ワクワクするもの?」
「なりたいもの?」
「やりたいこと?」
すべてにクエスチョン??でした。
それを言ったところでどうなるの?意味あるの?何のために?
ワクワクすることなんて分からないし、なれないのになりたいものって?
やりたいことなんて、しばらく寝たいか誰とも会いたくない、くらいでした。
とりあえず、一つ目に書いたのは…
ベンツに乗りたい、でした。
我ながら「こう書くことが正解!」という氣持ちで書いていたように思います。
その後は、時計、ARMANIのスーツ、カバン…と続きました。
さすがに物欲にとらわれすぎだと思ったので、彼の目を気にしながら、人の夢を応援できる人、威厳のある人、部下を何人も引き連れて歩く男など、なりたい人に焦点を当てて書き続けました。
「水本くんはどのような人生をおくりたいの?」
「水本くんにとって成功ってどんな姿?」
「今の水本くんは自分らしく生きている?」
矢継ぎ早に質問を浴びせてくる彼に戸惑いながら、
「Don’t 思考停止!(ドンシコ)」と自分に言い聞かせたものの、しばらく彼の前で呆然としていました。
そんな質問をされたことのない人間に、上記の質問を浴びせてくるというのは、もはや嫌がらせ、いじめだとその時の僕は思いました。
いつか世界中が僕を攻撃してくると思っていた被害者意識のプロフェッショナルである僕は、なんだかバカにされたような氣持ちになり、ロイヤルホスト新宿三井ビル店から逃げるように立ち去りました。
メンターの彼には、その100個のリストアップは宿題と言われました…。
その夜のジョギング時には何か悲しくなり、鉄橋の上から電車が通るタイミングで「うるせぇぇぇぇ!てめえらの血はなに色だーっ!!」と叫びました。そうしたら、なんだか悔しくなって怒りが湧いてきて、絶対になりたくない!やりたくない!こんな自分は嫌だ!というリストを作ることが浮かび上がりました。
時間に縛られた仕事なんてしたくない!
上司の目を気にして仕事したくない!
朝起きた時に清々しくないなんて嫌だ!
好きな人と離れている時間があるなんて嫌だ!
今の経済状況で居続けるなんて嫌だ!
我慢して生きたくない!
自分を裏切りたくない!
何かを諦めてゆっくりと死んでいくのは嫌!
親のための犠牲になる人生なんて嫌だ!
お金の残金をいつも気にしているなんて嫌だ!
自分を誇れないでいるなんて嫌だ!
などなど、その時の思いは怒りからでした。
しかし、それをひっくり返せば、自分らしく生きることが見えてきました。
僕は怒りで僕の魂の声が聴きづらくなっていたのかもしれません。
あまり人生に必要のない感情がこびりつき、鈍っていたのでしょう。
ある意味、メンターの問いは、僕の成長を促してくれました。
嫌がらせ、いじめだと思ってしまった僕の未熟さを思います。
その「嫌だ!」という思いから、その後、僕は自分らしさを思い出していくわけです。
今でも、誰かに「どう生きたいの?」と氣軽に質問を投げかけないようにしています。
当時の僕のダメージを誰かに与えることになるかもしれませんから。
「伝え方」は一生勉強です…。