補充おじさん、悪意なきトラップを外してまわる

炊事・洗濯・掃除…

これらの仕事はあまりにも家事として脚光を浴びている。

これらの作業のひとつでもしていれば、家事に参加し、それ相応の評価をされるべき対象になるだろうか。

それらの家事に付随する家事も存在する。

炊事には、買い出し・下ごしらえ・食器洗い・食器の後片付けまでが含まれるかもしれない。

洗濯には、外 or 内干しの選択・干す・たたむ(アイロンがけ)・収納まで。

掃除に至っては、その人のこだわりでそのプロセスが全く違うものになり、多岐にわたるでしょう。
要はどこで決着とするか。

しかし、それらの3大家事(と言わせてもらえるなら)は、着目され、感謝の対象になるだろう。

ここで論じたいのは、いつのまにか人知れず遂行されている家事についてだ。

「補充」である。

「補充」と言われて、その地味さの中にある輝きをイメージできる人は幸せである。
あくまで補充する側の人間の視点である。

この世には、2種類の人間がいる

「補充する人間」と「補充を空気のように感じている人間」だ。

たとえば、

トイレットペーパーは、何ロール買おうといつかは果てる。

誰かがかさ張りながらも、購入してストックしておかなければならないのである。
トイレットペーパーを購入するので、その人は、他の買い物を諦めることもあるだろう。
そこにボックスティッシュなどの追加購入義務が生じてきてしまったら、徒歩、自転車レベルの買い出しは無理だ。

誰かが、芯になったトイレットペーパーを交換し、ストックがある状態にしている。
そして、また、ボックスティッシュの裏の底上げ装置を発動させるタイミングを気にかけている人がいる。

ボックスティッシュを空にしたままに立ち去るのは罪だ。

それは即座に次に使う人への、悪意なきトラップとなるからである。

純粋無垢な人が、いつもと何の変わりもない日常を、疑いなく、過ごしていたとして、その悪意なきトラップにかかった時、どれほどの絶望と哀しみを背負うことになろうか。

洗濯洗剤の補充をねぎらうタイミングなど存在しない。

「洗剤を補充しておいてくれてありがとう。」
このお礼の台詞を言うタイミングなどない。

なぜなら、

洗剤を使う人が洗剤を補充するシステムだからだ。
誰にも気づかれず、ひっそりと確実に補充が行われなければ「洗濯」という家事のスタートラインにつけない。

補充とは、あまりにも地味な作業なのである

想像してほしい。

洗濯洗剤を補充するために、その本体の容器に詰め替え用のパックから液体洗剤を流し込んでいる、その瞬間を。

うまく流し込んでいた時にバランスを崩し、床や机の上に液体洗剤が溢れてしまったとしたら?

拭けば良い、と言われるかもしれない。
しかし、濃度の高いこれらの液体を拭ききるにはそれなりの用意と覚悟がいる。

これと同じような事態は、キッチンでも起こりうる。
調味料の補充において、こぼれてしまうという悲劇をひとりで抱えるには切なすぎるものがある。
調味料は濃いからだ。
無駄にしてしまったコストと挫折感でしばらくは落ち込める。

牛乳などの1リットルのパックを購入し、古いほうから飲んでほしいのに、家族の手によって、いつのまにか新しいほうが開封されているという事態に追い込まれた場合、補充従事者はどうその憤りを表現すればいいのだろう。

開封された同じものが同じ場所にあるということに。
これは悪意なきトラップなのか。

…取るに足らない、これは小さきことだろうか。

補充という脚光を浴びることも、その必要性を論じられない家事をし続けている人がこの世界には無数に存在する。

それはあなたかもしれないし、あなたのすぐそばにいる人かもしれない。

補充に対しての祈りを捧げながら、令和の時代をスタートさせたい。

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