ライフワーク一歩手前の物語「目標設定の憂鬱(3)」

才能開花豊かさ・お金魂の使命・人生の目的

当時、「自分の人生を生きる!」なんてことを軽々しくも口にしてしまった僕でしたが、「目標設定」という魔法がそれを実現してくれるような氣がしていました。

前回からの続きです。

同じような夢や目標を持つ若者たちが集まり、ネットワークビジネスの可能性を熱く語り合っていました。
そのビジネスシステムはとても公平で、消費者を守るものでした。564743e445fd6c8473f335d83130c793_m
システムが完璧だとしても、それを扱う人間次第でいかようにも変化するものですが。

ネットワークビジネスに対する世間の認識は今なおあまり良いものではありません。
扱う人間の動機に大きな差が生じやすいものだからでしょうか。

さて、当時の僕たちは、世の中の偏見に対する怖れよりも、
自分たちの情熱が手にした確信が人生を突き動かしていたように思います。

そして、そのような自分たちを擁護するかのように、
偏見を持っている人を逆差別するような意識もあり、
若者特有の「調子に乗って選民意識」的な意識もあったことを否めません。

「目標設定」という魔法は、日常を平々凡々と生きているそういった輩を差別するには良いツールでした。(ああ、なんて傲慢な僕)

僕らはマイノリティ(少数派)で、先駆者だ!世の中を変えるパワーを持っている!
この目標設定という魔法を使ってさまざまなことを実現させていこう!

(「目標設定」という言葉をいろいろな言葉に置き換えてみると楽しいかもしれませんょw。)

日曜日の朝に同志で集まっては、勉強会をし、そこで目標設定をしょうという話が出ました。皆の目標設定を披露し合うのです。

僕は必死に目標設定を考えました。
夢リストを作り、したいことやなりたいもの、持ちたいものを100個以上書き出しました。
そして、そのリスト作りで一番氣にしていたことは、

「この目標設定は皆にウケるだろうか?」でした。

「母に毎月、仕送りができるような権利収入を得る。」
「父親に海外旅行をプレゼントする。」
「海外に移住し、穏やかに暮らす。」
「留学をして、英語を学ぶ。」

模範解答のような目標設定に僕は酔いしれました。
今、その瞬間からでもできるようなことをわざわざ権利収入が入らないとできないようなことに仕立て上げて、人生を遅延させているだけなのですが、当時の僕はただ悦に浸るという状態でした。

その状態のまま、若者たちが集い、発表しました。
皆はどうか分かりませんが、僕は完全に「パフォーマー(演じる人)」でした。

皆、勝ち誇って、大得意で発表を終え、悦に浸る会は終わりました。

僕は清々しく汗をかき、やりきった感を漂わせて何者かになったような氣分でした。

この状態を僕は「未来に借金をする」と呼んでいます。

赤字国債をバンバン発行して、痛みは先延ばしにして減税をするようなものでしょうか。

そのような宣言をする会は、ネットワークビジネスにはつきもののように思います。
営業マンたちを励まして勢いづけたり、奮い立たせるためです。

夢を追いかけている人を応援しているのか、良い営業マンを育てているのか、
このあたりはネットワークビジネスのグレーゾーンのように僕は感じています。

当時の僕もカウンセリングルームを自宅で立ち上げるというために、
わざわざ権利収入を得なくても、いかようにも真っ直ぐにアプローチができたはずですから。

僕はただ、自尊心が低く、社会的な立場もない自分の状況を打破するために、
何かしらの「パワー」が欲しかっただけなのです。
それが「権利収入」だったというわけですね。

また、「権利収入」という言葉を他の言葉に置き換えてみましょうw。

さて、このような宣言をする場が、大きな会場で行われることがあります。

大勢のビジネスに携わる人たちが集まり、

「来月、僕は月収を●●円にします!」
「今年中にわたしは●●を達成します!」
「僕は目の前に吊らされたにんじんを食べます!(⇒のようなこと)!」

と宣言(コミットメント)していくわけです。

僕も壇上に登り、大きな声で叫ぶわけです。

「僕はこのビジネスで最高タイトルを来年までに達成します!」
※タイトルとは、会社側が用意したその人の影響力に値する称号のようなものです。

このコミットメントのおかげで、僕はいちじるしい自己矛盾を体験できましたし、
目標設定の持つ功罪を肌で学ぶことができました。

このビジネスに傾倒せざるを得ない状況が僕の前にやってきたのでした。
猛烈な自己矛盾を感じながら…。

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