男のええ格好しい「君に迷惑かけたくないんだ。」6

ハッピーライフ
いつもお読みいただき、本当にありがとうございます。
七夕の逢瀬
AQUA MIXT 潤治です。
メルマガで共有させていただきました
「メディアがミスリードする異性像」について、
男性が幻の女性像を夢みるようになってしまった原因になったであろう(潤治調べ)女性アニメキャラを3名あげさせていただき、その罪深き魅力を語らせていただきました。たくさんの反響をいただき、とても嬉しく思います。
その3名とは…
「めぞん一刻」からは音無響子さん。
「うる星やつら」からはラムちゃん。
「タッチ」からは 浅倉 南さん。
男のエゴを増幅させ、甘えを助長させてしまった女性たちです。
しかし、男はその優しさにひたすら甘え、だらしなく憧れます。
男は自分自身の弱さや情けなさを相手と分かち合うくらいなら、
ひたすら甘やかされることのほうが心地良いのかもしれません。
「君に迷惑をかけたくないんだ。」という言葉は、
「僕が君の迷惑になっているだなんて僕のプライドが許せないんだ。」と言い換えられます。
どこまでもベクトル自分向きです。
実は相手のことを思っての言葉ではありません。
素直にそう言えば、きっと相手は、
「迷惑をかけ合ってこそのわたしたちの関係でしょ?
家族(恋人)でしょ?格好つけてんじゃないわよ!」
と温かく男の右頬に平手で叩いてくれるでしょう。
恰好をつけたいのは、自分が傷つきたくないということです。

この物語に出てくる橋本、通子、内田はそれぞれが自分の過去に傷を負っています。
その傷を感じないように、思い出さないように、必死に乗り越えようと頑張ってきました。
実はその行為こそ、さらにその傷を深く自分に刻む行為になるとは、
彼らは微塵も思っていなかったでしょう。
ありのままの自分、等身大の自分をパートナーと分かち合うことができれば…
そして、その自分を自ら許すことができれば…
彼らが新たな傷を創り出す必要など無かったかもしれません。

橋本は解っていた。

嘘をつきながら、ふたりの女性を愛すことができないことを。

通子は、僕が浮気していることに気づいているだろう。

彼女の歪んだ作り笑いがそのことを物語っている。
お互いに夫・妻という役割を演じながら、
お互いに不可侵領域をもどかしく眺めているような気持ちだ。

結婚当初、彼女と心を通わせた瞬間があったことを今では幻だったように感じる。

本当に僕は彼女を愛していたのだろうか?
あの頃の僕に訊いてみたら、きっと…
「俺が彼女を幸せにしてやるんだ。」と勇み足気味に応えてくれるだろう。
その自分の上滑りなポジティブさが滑稽に思える。
今、通子は何を思っているのだろう。
毎朝、僕を会社に送り出す時、彼女は何を感じているのだろう。
裏切りに行く夫の背中をどんな顔をして見送っているのだろう。
僕は怖くて振り返ることができない。

普段から、彼女が僕を心配する度に、

何かすべてを見透かされているような、恥ずかしい気持ちになって
自分の中にある不安を誤魔化すために大丈夫なフリをしてしまっていた。

「君に迷惑をかけなくないんだ。」という言葉は、

彼女に見透かされたくないという僕のつまらないプライドだった。
いや、予防線だった。
これ以上、近づいてこないでくれ…と。
僕の不安を見つけ出さないでくれ…と。

僕が僕自身の弱さを認めたくないためにつく僕自身への嘘だった。

そんなつまらないプライドのために、僕はふたりの女性を傷つけてしまっている。

「いつもと雰囲気違いますね。」

仕事帰り、いつも待ち合わせるスタンドバーに独りで坐っていた橋本に声をかけた。

「いやぁ、今来たところだよ。」
いつからか、橋本は薬指の指輪を外すようになっていた。
橋本はこのところ、仕事の忙しさもあったが、少しやつれたように内田には見えた。
わたしのせい?と内田は思うこともあったが、
同時に彼の一時の安息地になっている自分を感じていた。

彼はわたしの前で泣いてくれた。

弱さを分かち合ったあの夜のことは忘れない。
その晩、嗚咽のような泣き声をあげ、震える彼のことを抱きしめていた。

とても小さく弱々しい彼を身体全体で感じるのだった。

そして、彼を支えたいという気持ちが湧いてくる自分に驚いてもいた。

それは遠い昔に感じた「お父さんを助けたい。」という気持ちにも似ていた。

わたしのこの想いは何かの贖罪なのだろうか?

と意識に上ってくるたびに、

それを打ち消すように「彼を支えたい。」と思うのだった。

しかし、彼は悩んでいるようだった。

少しでもその痛みを癒してあげたいと橋本を誘い出すのだった。

幾つもの契りが彼らの間で交わされていく。
内田にとってはその約束が過去の傷を癒していくようにも感じた。
彼と溶け合うような感触にのめり込んでいく自分もいた。
わたしはいったい誰を愛してるのだろう?
内田は意識にのぼってくる不安をかき消すように橋本を抱きしめるのだった。
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