信じ続けるのはタフなこと?「晩秋」

人生の中で、人に裏切られたと感じることはありましたか?

裏切ったことはありますか?

この物語に出てくる早紀とミツル、かつてふたりはつながりを感じていたかもしれません。

その幸せだった瞬間は、止まった時間として心に在り続けるでしょうか。

それを「執着」と呼ぶこともありますね。

その止まった時間の中で、生き続けることも多いでしょう。

恋愛はそのような止まった時間を創り出すことがあります。
そして、永遠に解けないパズルを目の前に絶望してしまうかもしれません。

埋められないピースは相手が持っているのですから。

―今回はミツルのお話です。

その晩は、サークルの仲間と記憶を失うほどお酒を飲んだ。

後から聞いた話だけど、僕は泣いていたらしい。高校生の頃の自分をやけに悔やみながら…。

仲間たちは取り乱す僕を痛く心配してくれて、家まで送ってくれた、らしい…。

気がついたら、僕は自分の家の天井を見つめていた。置き手紙と財布が枕元においてあり、財布からは数千円が無くなっていた。

最悪な気分だった。

布団から起き上がると、ダイニングテーブルに無造作に置いてある手紙に目がいった。

早紀からの手紙はすべて目を通していた。しかし、彼女のことを忘れたくて仕方がなかった。

夏の始まりあたりから届くようになった手紙は、十数通に及び、昨日に届いた手紙には、もう二度と手紙を書くことはないということと、僕への謝罪が書かれていた。

そのような手紙は初めてではなく、何通ももらった。

彼女に返事を書こうと何度も思った。出さずにある手紙も何通かある。

東京に来て、新しい生活が始まり、僕は今までの自分を否定するようになった。

まるで過去を否定することで、新しい自分になっていけるような気がしていたのかもしれない。

まるで違う人生を生きていけるような希望を感じていた。

忘れていくことで、人は大人になっていくのだと自分に言い聞かせていたのだった。

そうすれば、悲しい過去も悔しい気持ちも消えていくとでも言わんばかりに。

高校生の頃、両親は離婚した。

僕が早紀との時間にかまけていたせいで家族のつながりが弱くなってしまったと今でも思っている。

子はかすがいとはよく言ったものだ。

さらに僕は父や母の愛情を軽視して、早紀とのつながりに重きを置いていた。きっと、愛する人と本当に分かり合えるという感覚は家族の絆を超えていたような錯覚をしていたのだろう。

あの離婚は僕のせいだ。

僕は家族から逃げたかった。悲しい顔をしている母を見ていると、僕が責められているような気がして…。

まるで早紀との温かい日々の罰をと、言わんばかりに、その姿は僕を責め続けた。

東京に来て、罪悪感のようなものを感じないでいる時間は増えた。

僕は早紀との日々を思い出にしたかった。あの頃は僕の聖域で、それを思い出として風化させていくことが大人になることだと言い聞かせていた。

僕が変わったように、早紀も僕のことを忘れて変わっていくだろう。

早紀の手紙は僕を過去に引き戻すものだった。

僕のことなんて早く忘れて欲しかった。早紀の傷つくことを怖れない澄んだ眼差しを思い出す。

早紀の家族はとても仲が良く、当時、僕は彼女に復讐していたのかもしれない。僕に近づくな!と心の中で思ったいた。「こんな僕に慰めの言葉なんていらない!」と。

そんな形でしか、僕は愛を請うことができなかった。本当は傍にいて欲しかったのに…。

僕はきっと彼女を傷つけてしまうだろう。それなら、このままお互いに忘れていくほうが彼女にとって幸せなはずだ。

僕のことを忘れて欲しい。

僕を許して欲しい。

過去と決別することでお互いの新しい人生が始まるんだ。

そう思いたい。

そう思ってもいいでしょう?早紀…。

僕の出さなかった手紙と早紀からの手紙をゴミ箱の中に放り込んだ。

冬の匂いが窓から舞い込んで来た。

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