刻詠珈琲店11杯目「解説書(ガイドブック)の 言葉が難しくて分かりません。」オラクルカード【解釈・読み解き編】

カードの使い方

路地裏にある、アンティークカフェ『刻詠珈琲店』(ときよみこーひーてん)。
マスターは東儀 宗介(とうぎ そうすけ)、かつて天使だった頃の名は、メネフィール (Menephiel)。
仕事帰りや週末に通う常連OKは、小鳥遊 紬(たかなし つむぎ)、28歳。中堅デザイン事務所のグラフィックデザイナー。

週末の昼下がり、『刻詠珈琲店』には心地よい静寂が漂っていた。棚の古書から漂う紙の匂いと、焙煎したての豆の香りが交じり合う。紬が元気よく扉を開けると、宗介は読んでいた本から顔を上げ、静かに微笑んだ。

「宗介さん、こんにちは!今日も来ちゃいました!」
「いらっしゃい、ようこそ。」
宗介は本を閉じ、豆を挽き、コーヒーを淹れ始めた。

「あの、解説書のことで相談があって…。『自己の内なる宇宙と対話する』とか『高次元の自己との再統合』とか、難しい言葉ばかりで全然分からないんです。やっぱり私、スピリチュアルなセンスがないんでしょうか?」

宗介はゆっくりと首を振った。
「紬さん、そんなことはありませんよ。」
彼はカップを置きながら続けた。
「解説書の言葉は、カードを作った人の言葉で、紬さんの言葉ではないですよ。」
「私の言葉?」
「そうです。美術館で絵を見る時のことを考えてみてください。」

宗介は壁に掛かった古い風景画を指さした。
「まず何を感じますか?温かい色?力強い筆遣い?そこに描かれた物語?…画家の解説を読む前に、紬さん自身が感じることがあると思いますが、どうでしょう?」
「確かに!まず、自分の感覚を大切にしますね。」
「カードも同じです。」

宗介は静かにカウンターを拭いた。
「解説書は、絵画の横にある説明文のようなものです。作者の意図が書いてあります。でも、大切なのは、紬さんが何を感じるか、ですよ。」
「でも、解説書と私の感じたことが全然違ったら?」
「違うこともあるでしょうね、でも、どちらが正しいか、ではありませんよ。」

宗介の声は穏やかだった。
「紬さんが感じたことが、今の紬さんに必要なメッセージです。カードは紬さんの心に一番届きやすい言葉で語りかけてくるものです。」
「じゃあ、解説書は読まなくてもいいんですか?」
「そうですね…。読まないでいい、とは言いませんよ。」

宗介は古い辞書を棚から取り出した。
「解説書はヒントです。ですから、紬さんにとっての唯一の答えではないということです。『この言葉から私は何を感じる?』と、自分に優しく問いかけながら読んでみるといいですよ。」
宗介は辞書をぱらぱらとめくりながら続けた。
「『自己の内なる宇宙』が分からなくても、『私の心の中には、まだ知らない私がいるのかな?』と、自分の言葉に置き換えてみるわけです。」
「なるほど!私の言葉に翻訳すればいいんですね!」
「そうです。カードリーディングは、問いかけも大切な要素になってきますよ。」

宗介は窓の外を見つめた。
「たしかに、解説書という地図があるのは良いことです。でも、地図に描かれていない道もたくさんあります。その外に広がる世界こそ、紬さんの心の宇宙であり、未知でありながら必要なものがたくさんあると思いますよ。」
「今まで、全部理解しなきゃって焦ってました。」
「わかります、焦ってしまいますよね。大丈夫ですよ、紬さん。」

宗介の表情が少し和らいだ。
まるで、自分を見失いそうになっている紬を優しく包み込むような表情だった。
「誰かの言葉や本に書かれたことだけが、生き方じゃないと思います。それを自分の経験に照らし合わせて、そこから自分の答えを見つけることが大切なんじゃないでしょうか。」

宗介はコーヒーを紬の前に置いた。
「カードは道具の一つであって、まずは、解説書の言葉を、紬さんの言葉に置き換えることから始めてみてください。きっと、ワクワクする作業になると思いますよ。」
「はい!難しい言葉に振り回されず、私の言葉で理解してみます!」
「それがいいですね。」

午後の光が、開かれた解説書のページを優しく照らしている。
紬は、自分だけの言葉でカードと対話する準備ができていた。

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