こんばんは、黎允 潤治です。
今回のお話は 「みかんの売り方で愛を問う」 です。
前回は青果コーナーの鮮度チェックのことをお話ししましたが、
今回はくだものの売りかたで青果コーナーの愛を問います。
夏が終り、秋の虫の声がしだす頃、スーパーの青果コーナーでは入り口入って
すぐ目の前にある平台には、梨や、りんごが並びます。柿もちらほら…。
秋のくだものはいろどりも綺麗で陳列する側も気持ちがいいものです。
売り場のチーフによっては、開店前の綺麗に陳列した売り場を見て、ニヤリと
自己満足する人もいます。 僕もそうでした…。
そろそろ、みかんが店によっては並びだすタイミングです。
みかんには取れる時期によって、極早生種・早生種・普通種と分かれます。
これらのみかんの売りかたで、その店の青果チーフがどういう意識を持っているか
がわかります。
極早生の本格出荷は9・10月・早生が10・11月・普通種が12月~1月くらいになります。
極早生種の売りかたですが、この時期、沖縄産・鹿児島産のものが並びます。
食味は同じ仕入先農家でも、収穫時期、追熟度合い、畑などによって味に差が出ていて
安定した味をお客様に提供できないことが多いです。
なので、味によっては仕入れ値が安いので、安かろう悪かろうのみかんを原価の安さに
つられて売ってしまう店もあります。利益幅が大きいので、ついつい…。
しかし、この時期のみかんの売りかたは実はとてもチーフとしては神経を使っています。
それは、「まずいみかんを売らないこと」です。
なぜなら、このみかんの導入時期の印象が年末の売り上げに響くのです。
年末は10キロ・5キロなどの箱や、大袋で販売するので、みかんへの信頼を築いておくのが
大切になってきます。特に11月に入るとみかんとりんごと柿くらいしか、売り上げを作れる
商品がなくなってしまうので、みかんの信頼を大切にします。
9月下旬から、10月中旬までのみかんの売りかたで、いかに美味しいものを販売しようと
考えているかを見定める機会なのです。 食味が悪い青いみかんを価格の安さだけで売っている売り場はあまり先のことも、買う側のことも考えていないかもしれません。1ネット398円とか…。
たとえば、安いからといって食味の悪いみかんを平台で展開し、はじめは売れるのですが、食味の悪さに買い手は離れていってしまいます。売り手側は売り上げの欲しいので、つい導入期に無理をしてしまうのです。
みかんの味が安定し、酸味とのバランスが良くなってから、平台展開をするのが定石です。
極早生種から、早生種になるころが10月の中旬以降です。その頃に柿とみかんが平台にきて
りんごもフジりんごが登場するまでは、おとなしくしています。りんごのことも書きたいッ…。
また、売り場でアピールしていることはあまりないのですが、シートマルチ栽培されたもの
も流通します。シートマルチ栽培とは、色づきがよくなるよう、糖度を高くするために
白いシートをみかんの樹のまわりに敷きます。そうすることによって、雨を遮断し、地面を
乾燥させます。そのほうが糖度が高くなるのです。「マルチみかん」と言われます。
そして、太陽光も反射して当たるので、色づきもよくなります。
色づきが良くなって、食味が安定して、はじめて売り場で大きく展開する青果コーナーに
出逢うと感動してしまいます。
赤いネットで袋詰めし、色づきをごまかさずに、透明な袋でみかんを販売していたりすると
「あんた、正直者ッ」って嬉しくなります。 精肉コーナーの冷蔵ケースの明りがすこし赤い色
だったりするのと似ています。
我慢して我慢して、ようやく平台に持ってきたんだなって思います。
そういうお店で、安心して買いましょう。
和歌山・長崎・愛媛などの産地が出てくるともう、みかんはピークに入ります。
ほんのちょっと裏話を…。
美味しい長崎みかんとまずい愛媛みかん…、売り場での値段が同じならどちらを買いますか?
長崎みかんの原価は愛媛みかんの3割安です。 やすくて美味しいみかんを仕入れて、
そのまま長崎みかんとして売るでしょうか。それともブランド力の愛媛にするでしょうか。
昔はみかんのバラをお店で袋詰めしていたので、愛媛みかん短冊なんかもありました。
なので、産地は長崎だけど、○○して愛媛産にして売り場に○○するなんてこともありました。
これは、売り手側の論理です。会社の利益を取っても自分の給料はあまり変わらないのですが、
それをやって利益をとっている青果チーフがいたことも事実です。
とにかく、みかんの導入期の展開の仕方で、その売り場のチーフの愛を感じる僕なのでした。